頭痛について注意点があったら教えて下さい
第39巻 第2号 日本臨床内科医会会誌より編集。
頭痛は大きく2種類に分類されます。
・1つ目は他に問題がなく頭痛だけが問題になるもので、これは一次生頭痛と呼ばれます。
一次性頭痛では片頭痛、緊張型頭痛、MOH(薬物乱用頭痛)、群発頭痛などが良く知られています。
・2つ目は他に問題がありそれが原因で頭痛を併発しているもので、二次性頭痛と呼ばれます。
二次性頭痛の原因は様々で、くも膜下出血、髄膜炎、脳炎、緑内障、脳神経内、帯状疱疹、椎骨動脈解離、側頭動脈炎、慢性硬膜下血腫、脳静脈血栓症、RCVS、副鼻腔炎、低髄液圧性頭痛可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)など多岐にわたります。
二次性頭痛は一次性頭痛と比べて緊急性が高く重症なものが含まれる為特に注意が必要です。
以下は二次性頭痛を見逃さない為のポイントですを英語の頭文字をとってSNOOPと覚えておくと良いようです。
①Systemic symptoms, systemic disease (全身症状、全身疾患あり)
②Neurologic symptoms or signs(神経学的症状、徴候あり)
③Onset sudden(突然の発症)
④Onset after age(40歳以降の発症)
⑤Pattern change(パターンの変化)
頭痛が起きた時に一番気をつけたいことは緊急性があり重症になりうる二次性頭痛を見逃さないことです。
一次性頭痛は命に支障をきたすことが少ない反面、一般的で身近な疾患ですのでしっかりと知っておきたいところです。
一次性頭痛の有病率は種々データによると緊張型頭痛、片頭痛の2つが多く、重要です。その他、頻度は少ないながらも薬物乱用頭痛、群発頭痛も注目すべき頭痛と言えます。
1、片頭痛
『前兆のない片頭痛の診断基準(国際頭痛分類第3版:ICHD-3,2018)
A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある。
B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)。
C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす。
① 片側性
② 拍動性
③ 中等度~重度の頭痛
④ 日常的な動作(歩行や階段昇降)などにより頭痛が増悪する.あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目をみたす。
① 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
② 光過敏および音過敏
E. ほかに最適なICHD-3の診断がない 』
片頭痛は血管周囲の炎症とそれによる血管の拡張によって起こると考えられており、「頭痛発作は4〜72時間にわたって持続すること」「そして日常的な動作、特に頭を動かすことで心臓の拍動と同じリズムに合わせ拍動する頭痛が起こること」「じっとしている方が楽になること」「閃輝暗点と言う眼症状が頭痛に先立って起こる事があること」などが特徴です。
チョコレート、カフェイン、アルコールなとどの嗜好品が誘因になると考えられており、先ずはこれらを除去する事が治療の第一歩です。それでも効果がなければ、予防薬、治療薬を使う事になります。
2、緊張型頭痛
『頻発反復性緊張型頭痛の診断基準(国際頭痛分類第3版)
A3ヵ月以上を超えて、平均して1ヵ月に1~14日(年間12日以上180日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~D を満たす。
B30分~7日間持続する。
C以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす。
1両側性
2性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
3強さは軽度~中等度
4歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D以下の両方を満たす。
1悪心や嘔吐はない
2光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
Eほかに最適なICHD-3の診断がない。
○平均して、1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の発作頻度であれば稀発反復性緊張型頭痛に分類します。
○3ヵ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の発作頻度であれば慢性緊張型頭痛に分類されます。慢性緊張型頭痛では頭痛は数時間から数日間、絶え間なく持続し、軽い吐き気をともなう場合があります。 』
緊張型頭痛は頭部表面の筋肉が過度に緊張した為に起こる頭痛です。片頭痛ほどに重症ではない為、「痛くても仕事が出来る」「仕事に集中すると忘れている」「動いて楽になる」などが特徴です。
緊張型頭痛は近視にが誘因になっている事が多く、近視の小中高生では「裸眼で生活している」場合に多いようです。
緊張型頭痛では近視の矯正、ストレスマネージメント、リラクゼーション、頭痛体操などの予防が重要です。効果がない場合は薬物による治療となります。
3、MOH(薬物乱用頭痛)
『診断基準
A.以前から頭痛疾患をもつ患者において,頭痛は1ヵ月に15日以上存在する
B.1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している(服薬日数については表を参照)
8.2 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)
服薬日数
8.2.1 エルゴタミン乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.2 トリプタン乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.3 非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
1か月に15日以上
8.2.3.1 パラセタモール(アセトアミノフェン)乱用頭痛
1か月に15日以上
8.2.3.2 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)乱用頭痛
1か月に15日以上
8.2.3.2.1 アセチルサリチル酸乱用頭痛
1か月に15日以上
8.2.3.3 その他の非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
1か月に15日以上
8.2.4 オピオイド乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.5 複合鎮痛薬乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.6 単独では乱用に該当しない複数医薬品による薬物乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.7 特定不能または乱用内容未確認の複数医薬品による薬物乱用頭痛
1か月に10日以上
8.2.8 その他の治療薬による薬物乱用頭痛
1か月に10日以上
C.ほかに最適なICHD-3の診断がない
*薬剤の使用過多による頭痛で最も多いとされているのは、複合鎮痛薬による乱用頭痛です。複合鎮痛薬は市販の鎮痛薬が代表例です。気軽に手に入りやすいこともあり、鎮痛薬の飲みすぎには注意しましょう。頭痛ダイアリーを使用して服薬日数を確認するようにしましょう。 』
薬物乱用頭痛はもともと片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛があり、鎮痛薬などの治療薬を飲み過ぎた結果陥る病態、病気です。
片頭痛にせよ緊張型頭痛にせよ、治療よりも予防が重要であると言う事をこの薬物乱用頭痛の存在が示していると思います。
薬物乱用頭痛ではもともとの頭痛をしっかりと診断し、原点に帰って予防から再スタートする事が重要です。